スキージャンプのスーツ規定違反はなぜ起こる?高梨沙羅も泣かされた規定とは!

SkyJump スポーツ
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先程、北京五輪の新種目である、「ジャンプ混合団体」の1番手で飛んだ高梨沙羅選手。

103mもの大ジャンプを見せるもスーツの規定違反で失格となり記録が取り消しとなりました。

悔しさで泣き崩れていましたし、残念な気持ちもありますが、熱い戦いの中で水を刺されたような気持ちになりました。

本人が一番悔しいですが、応援していたファンも同じ気持ちです。

今回悔しい気持ちにさせた「スーツ規定違反」とはどういうルールなのかを紹介します。

スーツ規定違反とは

国際スキー連盟(FIS)は毎年のようにルールを改定しているようです。

スキージャンプは体に風を受けて飛ぶ競技のため、着るスーツの差が大きく結果に影響するため厳格なルールが設けられています。

今回のスーツのルールとは以下の通り定められています。

  • スーツは体のすべての部分で男子がプラス1~3センチ、女子は2~4センチ

股下が1cm下がっても飛距離が大きく伸びるため、各国規定ギリギリのスーツを用意しているようですのですが、体の状態や着方でも規定違反が発生しますね。

スーツの規定 原文は

4. スキージャンプスーツ

スキージャンプスーツの全ての部分は、同一素材(4.2 参照)で作られていなければならず、また外側からも内側からも、同一の空気透過率でなければならない。

スーツは、フロント中心のジッパーで閉じなければならない。閉じたジッパーストラップはえりより1.5cm から 5cm 飛び出していなければならない。ジッパーの下部の長さは、股下のクロスする部分より最低 10cmのものまで認められる。このジッパーの幅は、15mm 以下でなければならない。

飛行中、ジッパーは完全に閉まっていなければならない。スーツ(縫い目)のデザインは、添付資料の”スキージャンプスーツ“のイメージと一致していなければならない。

スーツは、ボディーのあらゆる部分においてぴったり体にあったものでなければならない。測定したスーツのあらゆる非伸縮部分のサイズはボディーサイズを越えてはならない。スーツの袖をグローブに固定してはいけない。

ただし、以下は、例外である。
ブーツの上にスーツを収めるための最大許容差を 10cmとする。この許容差は足パネルの膝下密着部分から裾まで可能とする。
グローブの上にスーツを収めるための最大許容差を 4cm とする。この許容差は、袖口から 10cmまで与えられる。

  • 追加規制 :
    •  スーツへのマーキング(測定及びコントロールのため)を認める。
    •  スーツの厚さは、全てのパーツで同一でなければならない。
    •  素材やスーツへの、化学的(気体、液体、固体)または機械的処理は認められない。
      - 首周りの高さの前後差(前部と後部の高さの差)は、5cm 以下とする
    •  外側のタックやダーツ、折り目やパッドは認められない。
    • スキーブーツにスーツを取り付けるために使うストラップは、片足につき 1 本とし、固定された(調整できない)タイプのみ認める。ストラップはひとつの連続したピースから成り、クリップ、バックル、または複数の素材をつなぎ合わせる機能のないものとする。ストラップは、足パネルの内側と外側のシームの真ん中で、スーツの縁部分に固定しなければならない
    • 袖の長さは、手首の関節(*訳注:手首の関節で骨が出っ張っている一番高いところ)まで達しなければならない。袖の下端(手首まわり)部分は、直線にカットする。下端部分に指を通すための穴を開けてはならない。
    • スーツの縁は全て、1 つのピースで縫製しなければならず、またピース全体は同じ物理的特性を持った素材でなければならない。
  • 標準測定コントロールポイント:
    •  前腕の長さ(添付資料の AL を参照)は、脇の下のシーム(縫い目)が交差するところから、袖の先端までのシームに沿って測定する。測定した数値は、腕の実寸を上回ってはならず、かつ最大許容差 4cm を下回ってはならない。
    • 前股下の長さ(添付資料の SL を参照)は、股下のシームが交差するところ(添付資料のSX を参照)から、スーツの足部分の先端までのシームに沿って測定する。測定した数値は、コントロールで測定した選手の股下の長さを下回ってはならない。
  • スーツを構成するパーツ数(片袖1、胴3、片足2):
    • 袖部分は、片袖 1 パーツずつ:(添付資料の 3 を参照)袖はスーツのメインパーツとつながり、手首の関節に達しなければならない。また、腕を胴体から離して伸ばしたとき、袖の内側のシームと胴体のシームが一直線にならなければならない。
    • 胴体(ウエストより上の上半身)は 3 パーツ:左右のフロントパネル(添付資料の 1 を参照)、及びバックパネル(添付資料の4を参照)脇下からウエストのシームまでのフロント及びバックパネルは一致しなければならない。
    • 片足(ウエストシームより下)2パーツずつ:足の前部(添付資料の2 を参照)と後部(添付資料の5を参照)。股下から下の部分は、前後のパーツのサイズが同じでなければならない。 外側も内側も、シームは足に沿って中心になければならない。前後の股下のシームは、股下の一番下の部分(添付資料の SX を参照)で、足の内側のシームと交差しなければならない。
    • ジッパー、取り付けに使用するためゴムひも及びひもは、個別のパーツとしてカウントしない。
    • ウエストシームは、腰骨の上 5cm 以内(ウエストのくびれ部分)に、水平に通っていなければならない。
    • 上半身のフロントとサイドのパネルをつなぐシームは、足のシームと一直線につなぎ、腋から足首外側まで垂直に通っていなければならない。
    • 足の裾(足首まわり)部分は、ビンディングをブーツヒールに固定する装置が入るように仕立てることができる。
    • シーム(縫い目)は、スーツの各部分をつなぎ合わせる目的にのみ、存在が認められる。シームはスーツの内側でなければならない。素材の端をミシン縫いすることは認められない。
      10mm 以下のシーム(シーム後ろから端までの素材の幅)をつなぐ(縫う)ことは認められない。
      全てのシームは直線、または体形にフィットさせるために形成したものでなければならない。
      体積を増したり空気力学的効果を高める目的で、スーツ内側または外側にシームを追加または変形したり、ひも、棒(ロッド)、折り目、テープ等を使用することは認められない(アンダーウェアも同様)。
    • 添付のスーツの図解は、このルール(文章)の判定基準である。例外はユース大会:パーツの数とスーツの裁断には限りがない。

女子スキージャンプスーツの追加規格

  • スーツを構成するパーツ数(上半身7、下半身8、片腕2):
    上半身 7パーツ (添付資料の1、7、4、8を参照)
    下半身 8パーツ(添付資料の2、9、6、10 を参照)
    ウエストシームは、ボディーの一番細い部分の胴体を水平に通っていなければならない。

    • 肩を含む袖部分は、片袖2パーツずつ:前袖(添付資料の 3 を参照)と後ろ袖(添付資料の 5を参照)。 袖部分は、首の開口部から始まり、肩そして手首の関節(*訳注:手首の関節で骨が出っ張っている一番高いところ)まで続く。腋から下の部分は、前後のパーツのサイズが同じでなければならない。袖の外側のシームは、袖に沿って中心になければならず、また胴体のシームと平行でなければならない。また、腕を胴体から離して伸ばしたとき、袖の内側のシームと胴体のシームが一直線にならなければならない。
    • サイドパーツ(ポジション9とポジション 10)
      両サイドのパーツは、選手の膝の高さで終わる。その許容差は、膝の上下 +/-15cmである。
    • アッパーフロントパーツ(ポジション1、A1)
      フロントパーツ1の上部(アッパーエリア)は、幅 10cm以上なければならない。ポジション1とポジション7の間の前面部のシームは、胸の中心を通らなければならない。

4.1 素材、生地

スーツの全パーツにおいて、素材表面の構造及び素材の構成は同一でなければならない。唯一の例外は、同一素材の色違いである。

スーツの厚さは、4.0mm 以上、5.0mm 以下でなければならない。

スキージャンプスーツの構造は、以下から成る 5 層ラミネート加工である:
– アウター生地/第一層
– フォーム
– 弾性膜
– フォーム
– 裏地

これらの構成要素は、熱溶解プロセスを用いてラミネート、もしくはフレーム(火炎)ラミネートされる。このラミネート作業には、4 行程が必要である制限空気透過率 40 l/m2/秒(FIS ルール)は、穴を開けることで確保し、一定の値を保証する。

アウター生地/第一層

アウター生地は、ツーウェイ伸縮縦編生地(bi-elastic warp-knit fabric)、いわゆるシャルムーズ生地(パターン表記法)である。この素材は、2 本糸システム縦編機(2-thread system warp knitting machine)で生産される。

素材: 81 % Polyamid gloss dtex 44f12
19 % Elasthane (Lycra) dtex 44f1
重量: およそ 180/190 g/m2
弾力性: 縦 150-160% 横 およそ 85-95%

表面処理(フィニッシング):
材質は、伝統的な後染め(酸性染料)で染色する。生地表面の特性を変えてしまうので、染料及び染色助剤以外に、化学物質の使用は認められない。
素材には 2 種類の面がある:

  1. 縦方向のストライプ”リップファブリック(イーブンサイド)
  2. サテンサイドと呼ばれる横糸のつながり

サテンサイドは、ジャンプスーツ外側の見える部分である。サテンサイドは、チンツ加工されていなければならない。それ以外の化学的または機械的処理による表面加工は認められない(例:アル
ミニウムスチーム、フォイル加工、成形等)。

裏地
裏地はアウター生地と同一(素材と重量)のものとするが、色は白のみとする。

内側生地/フォームと弾性膜
内側の素材は、2.1mm のフォーム 2 層(容積重量約 55g)と、その間に弾性膜をはさんだ 3 層ラミネートである。規定の空気透過率を満たすよう、このラミネートに穴を開ける。

4.2 スーツ素材の空気透過率

ジャンプスーツの素材は、外側からも内側からも、同一の最小空気透過率でなければならない。

最小空気透過率を次の通り定める:
生地を伸ばさない状態で、10mm の水圧下において、40 リットル/m2/秒以上。この値は、メーカーによる流通時、すなわちプロンビング時に満たさなければならない。
競技でのコントロールにおいても、この値は 40 リットル以上でなければならない。
使用により素材が幾分伸縮することもあり得るが、スーツの背中部分の空気透過率は、スーツのその他の部分と同じかそれより高くなければならない。

4.3 アンダーウェア

  • アンダーウェアの厚さは、3,0mm 以下でなければならない(重ね着を含めアンダーウェア全てのレイヤーとパーツの合計)。
  • アンダーウェアの空気透過率は、60 l/m2 を超えなければならない。
  • アンダーウェアのサイズ、フィット、形状は、ボディサイズと体形と同じでなければならない。
  • フードの形状は認められない。
  • 固定するもの(例;指穴)は認められない。

4.4 スーツ、素材の検査

最小空気透過率のガイドラインについては、FIS コントロール手続/用品ワーキンググループが「連邦マテリアルコントロール機関」と共同で定めたものを有効とする。

技術規格と空気透過率条件に適合する限り、またスーツの全ての部分が同一素材で作られている限り、スキージャンプスーツへの多層素材使用が認められる。

めちゃくちゃ細かい規定がありますね。

それだけスーツの差が結果に影響するということがわかりますね。

過去のスーツ規定違反は?

高梨沙羅選手ですが、過去にもスーツ規定違反を経験しています。

2018年12月のW杯第2戦で股下8ミリ短いで規定違反で失格しています。

え、8ミリで・・・

この時は飛躍前のスーツのチェックで股下の長さが規定よりわずか8ミリ短かったということですが、失格となった第2戦目と第1戦は同じスーツを着ていました。

また、2021年2月では高梨沙羅選手のスーツ規定違反となりました。

その理由は太もも部分が規定よりわずかに大きいと判定されました。

ちょっと食事が取れなくて痩せたりすると規定を超えたりする可能性が出てきます。

繊細な競技であることがわかります。

ツイッターの反応は?

ツイッターで今回の規定違反についてどう語られているのでしょうか?

高梨沙羅選手の気持ちが伝わってきて皆悔しいと感じていますね。

まとめ

高梨沙羅選手に限らず規定違反は珍しいものではありません。

でも、ジャンプの結果以外での判定で記録が取り消されるのは、悔しいですよね。

高梨選手が一番悔しい思いをしていると思いますし、精神的なダメージを追っていないか心配です。

高梨沙羅選手は素晴らしいアスリートです。

今回のことを気にせずさらなる活躍を期待し、応援しています!

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